認知症の介護をしていると、突然ご家族がふらっと外に出て行ってしまったり、施設内で夜通し歩き回ったりする行動に直面することがあります。一般的に「徘徊(はいかい)」と呼ばれるこの行動ですが、目を離した隙にいなくなってしまうのではないかという不安から、介護する側は気が休まる暇がありませんよね。
「転んで怪我をしたらどうしよう」「事故に遭ったら…」 そんな不安を抱えながら、毎日ギリギリのところで頑張っている方も多いのではないでしょうか。
今回は、介護現場でも実践されている「徘徊への対応策」と「予防のヒント」をご紹介します。少しでも皆さんの肩の荷が下りるきっかけになれば嬉しいです。
そもそも、なぜ「徘徊」するの?(目的のない行動ではありません)
「徘徊」という言葉には「あてもなく歩き回る」というニュアンスがありますが、実は認知症の方ご本人にとっては**「明確な目的や理由」**があることがほとんどです。
例えば、以下のような理由が隠れていることが多いです。
- 「子どもが学校から帰ってくるから、ご飯を作らなきゃ」(過去の記憶・役割への回帰)
- 「ここは私の家じゃない、家に帰らなきゃ」(場所の認識障害・不安感)
- 「トイレに行きたいけれど、場所がわからない」(身体的な不快感)
- 「退屈だ、体を動かしたい」(運動不足・ストレス)
周りからはあてもなく歩いているように見えても、ご本人の頭の中では「大切な用事」を果たそうと必死に行動しているのです。まずは**「理由があって歩いているんだな」**という視点を持つことが、対応の第一歩になります。
現場で実践!徘徊が起きたときの「3つの基本対応」
では、実際に歩き出してしまったとき、どのように声をかければよいのでしょうか。介護現場でも大切にされているポイントを3つご紹介します。
1. 否定しない・無理に止めない 「どこに行くの!ダメでしょ!」と強い口調で引き止めたり、無理やり手を引いて連れ戻そうとしたりするのは逆効果です。ご本人は「邪魔をされた」「怒られた」というマイナスの感情だけが残り、余計に混乱して興奮してしまうことがあります。
2. まずは同調し、一緒に歩く 「お出かけですか?一緒に行きましょうか」と声をかけ、まずはご本人のペースに合わせて少し一緒に歩いてみてください。寄り添うことで、ご本人は「この人は自分の味方だ」と安心感を抱きやすくなります。
3. 気を逸らす(別の提案をする) 少し一緒に歩いて落ち着いてきたら、「お茶が入りましたよ、一杯飲んでから行きませんか?」「外は暗いので、明日明るくなってから出かけませんか?」と、別の行動を提案して気を逸らしてみましょう。ふっと本来の目的を忘れて、自然に戻ってきてくれることもあります。
これで安心!すぐにできる環境づくりと予防策
ご本人の気持ちに寄り添うことが大切だとわかっていても、24時間ずっと見守り続けるのは現実的に不可能です。介護者の負担を減らすためには、「環境の工夫」や「便利なツール」に頼ることが不可欠です。
- 家の中の環境を整える
- トイレの場所がわかりやすいように、ドアに大きな目印や電気をつける。
- 玄関の鍵を、手が届きにくい場所や複雑なもの(二重ロックなど)に変更する。
- ドアが開いた時や、ベッドから降りた時にチャイムが鳴る「センサーマット」や「ドアセンサー」を導入する。
- GPS端末・見守りシールを活用する
- 万が一外に出てしまった時のために、靴やカバンなど普段必ず身につけるものにGPS端末を仕込んでおくのがおすすめです。
- 自治体が配布している「見守りシール(QRコード付きのシール)」を衣服の裏などにアイロン接着しておくと、保護された際の身元確認がスムーズになります。
- 日中の活動量を増やす
- デイサービスを利用したり、一緒に散歩をしたりして、日中に適度な疲れを感じてもらうことで、夜間の徘徊(夜間せん妄)を減らす効果が期待できます。
まとめ:一人で抱え込まず、周りを巻き込もう
認知症の「徘徊(ひとり歩き)」は、ご本人の不安や焦りのサインです。しかし、それに100%向き合おうとすると、介護する側が倒れてしまいます。
「目を離さないようにする」のではなく、「目を離しても安全な仕組み・見つかる仕組み」を作ることにエネルギーを注ぎましょう。
ケアマネージャーさんへの相談はもちろん、地域の「SOSネットワーク(事前登録制度)」や警察への事前相談など、使える公的サービスやご近所の目はフル活用してくださいね。
介護は長距離マラソンです。ご自身の休息もしっかりとりながら、便利グッズや周囲のサポートに頼って、無理なく見守っていきましょう!
7:51 PM